カマイタチと防災の日

ふと子供のころに両親から聞いた「カマイチ」を思い出した。
特に寒風の吹くおり等に、転んで(転ばなくとも気づくと)足に切り傷のような傷を受けると
”あっそれはカマイタチ(のせい)だろう?”と云われた。それから、父と母の論戦が始まる。
父(とうちゃん)は父で「そこには瞬間的に真空状態が生まれ、傷となって受ける」とご尤ものような話を
するのでやっぱりとうちゃんだなと思っていた。
でも母(かあちゃん)が云う”鎌”と”鼬(いたち)”の話の方が温かみを含んだ笑いを誘うから好きである。
「その傷は、鼬が悪さをするので鎌で追い払うんだよ」と・・。
また父は”構える太刀”が語源だと云うからなお説得力があったのではと当時を記憶する。
いづれにせよお互いの主義主張が実に愉快であったことに懐かしさを覚えた。

百科事典によると『窮奇かまいたち鎌鼬とも書く)は、甲信越地方に多く伝えられる魔風の怪。
「構え太刀」の訛りであると考えられているが、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』「陰」の「窮奇」に見られる
ように、転じてイタチの妖怪として描かれ、今日に定着している。『和漢三才図絵』には、イタチも魔物の
一種として扱われており、群れると不吉で、夜中に火柱を起こし、それが消える所には火災が起きると
されている。また、イタチは後脚で立ち、人の顔を見つめる事があるが、この時、キツネと同じく眉毛の
本数を数え人を騙すと言われる事から、イタチの妖力と「構え太刀」の語感が混同されて出来上がった
語形であろうと考えられている。
人を切る魔風は、中部・近畿地方やその他の地方にも伝えられ、信越地方では、カマイタチは悪神の
仕業であるといい、暦を踏むとこの災いに会うという俗信がある。奈良県吉野郡地方でも、人の目に
見えないカマイタチに噛まれると、転倒し、血も出ないのに肉が大きく口を開く・・云々。』

父ちゃんも母ちゃんも正解であった。
今日9月1日は防災の日。関東大震災が起こった日である。死・不明14万2千余、家屋全半壊25万4千余、
焼失44万7千余というから想像に絶するものがある。
見えないカマイタチもときにはいい。噛まれる事もあるんだということを十分理解できたら・・。
   
   災難に遭(あう)時節には 災難に遭がよく候
        死ぬ時節には 死ぬがよく候   是ハこれ災難をのがるる妙法にて候 
                                                    良寛
文政11年今の三条市に襲った大地震のときに酒造業を営む被災者宛てに出した手紙である。
恐ろしいことを良寛さんはよくぞ言うもんだ。情けないのじゃないかと思う。
だが我々現代人は、寒ければ暖房、暑ければク−ラ−を使えばいい。車のための道路が無ければ山
を削り谷を埋めて道路を作り・・・すべてそのように人為によって自然を克服することをまず考え、それは
可能であるかのように考えがちだが、良寛さんの時代の人々は、自然に対してはまずそれを受け入れる
ことを考え、堪えがたくとも堪え、自然と融和して生きる。
良寛さんという人はそれを哲学として原理化していたのである。
カマイタチもあらゆる災害も人災が発端となるようなことではいけない。
自然との共存共栄を改めて痛感するのである。