先輩に完敗

大学生時代のこと。ある電気屋に秋田美人の奥さんが店を切り盛りしていた。
別に用事はないのだが、電池が切れたといってはその店に通うことが暫し続いた。
その奥さんに一目ぼれしていたのだという。
そんなある日、その奥さんから息子(小学5年生)の家庭教師をお願いされた。
再三再四お願いされるものだから、またその奥さんと話がしたいために引受けることになった。
それから先生となったわけで、奥さんから優しい声で”先生・・先生”と呼ばれるたびに
いい気持でいた。 がしかし、息子はそうでなかった。
小学生に似合わず、街のチンピラのような言葉づかいや態度であった。
そんなある日、勉強がスタ-トしてまもなく脅しをかけてきた。
それもナイフをもって自分の首に押し付け”いいかこの~俺のいうことを聞け!さもないと
てめぇの首切ってやるからな!おい!”。
瞬間びびったそうである。 しかし、所詮は小学生と我に戻り、「おお・・おめえはそんなナイフ
でしかおれの首を切ることができないのか!割り箸とその袋を持ってきな!」と先生は言う。
持ってくる来ないで一悶着あったが、しかたなく用意したようである。
「いいか、手のひらを目の前に揃えその間に割り箸を右手のひらと左てのひらに置いて
左右から力を入れてみろ!」「もっとしっかり力をいれるんだ!」
「よし、先生が箸袋でその割り箸を切ってやる」
しっかり力を入れていた息子。
「えいっつ!!!」 掛け声とともに上から割り箸をめがけて箸袋を垂直に下ろした。
見事、その割り箸が2つに折れた。
それを見ていた息子、びっくり仰天。
次の家庭教師の日、息子の態度が一転。素直に物わかりのいい子になった。
その後、医師を目指し北里大学に進学。めでたく医者となったようである。

箸袋で切ったように見せかけ指で折ったのである。
しかし、そんな機転を利かせてその息子の性格、態度、進路まで決める原因を作った先輩
さすがであった。その後、高校生の娘さんの家庭教師もお願いされたがとてもとても自信が
なかったので断り続けたという。

人生いろんな場面がある。いかに機転を利かせることができるか、いろんな経験の積み重ね
の結果であるとその先輩は力説していた。
先輩に完敗した。

先月、恒例となった大学同窓会函館OB会新年懇親会での雑談から教わった。
先の総理大臣ではないが”人生にはいろんな坂がある。上り坂もあれば下り坂もある、そして
もうひとつの坂に真坂(まさか)という坂がある”
平坦な人生には感動がない。機転を利かせていろんな坂にチャレンジしようではないか。