龍のひげ

お釈迦様は『涅槃経・巻12』の中で「福の神と貧乏神」の物語として例え話をしている。
ある人の家に一人の見るからに美しい女性が着飾って訪ねてきた。その家の主人が聞くところによると
人々に福を与える福の神である~私の行くところには金銀財宝をはじめとしてあらゆる福徳がついて
廻るのだという。主人はすっかり喜んで手厚く接待した。
追いかけるようにして、一人の見るからに醜い粗末な身なりをしている女が入ってきた。
聞くところによると人々に貧を与える貧乏神である~私の行くところには災害、病気をはじめとして
あらゆる不幸せがついて廻るのだという。主人は驚いて剣を構え、その女を追い出そうとした。
ところが貧乏神がいうにはその福の神はわたしの姉で、もし姉を愛するのであれがわたしも愛さねば
ならない~私たち姉妹はいつも連れだって歩く~といってその貧乏神だという女が出ていくと先の
美しい福の神も姿を消したという。

先日、厚意にしている民宿経営のお檀家さんでの話。
節分の夕方に一人の見すぼらしい自らに浮浪者風の男がやってきたという。手には小鉢をもっていて
その男曰く「この鉢は、福をもたらすという”龍のひげ”であるから買ってくれないか」と言われた。
姉妹と子供が対応した。
小鉢を見た姉はすかさず”なにこれ!雑草じゃないの?・・そんなのいらないから早く帰って!!”と
どなり散らした。そばにいた子供も”なんだ~これで幸せになるの???”と受け付けない。
その様子を見ていた妹は”いくらなの” 
その男”800円” 妹”わかった置いて行きなさい”とお金を渡した。その男は去っていった。
「ねえ!800円位で喜んで帰っていたのだからいいとしなきゃね。お腹が空いてそうだったし、弁当の
一つでも買えるんじゃない。一食だけも助かったし生きるってことがわかったと思うよ」と妹が覚った。
それを聞いていた姉と子供は腑に落ちない様子・・。
ところが次の日になった。
一本の電話が鳴った。「来月の10日から1か月、17人長期滞在するから」と予約が入ったのである。

お釈迦様の言われた「生あれば死があり、死があれば生がある。福があれば禍がある。禍があれば
福がある。善いことがあれば悪いことがある~人々はこのことを知らなけらばならない。愚かな者たちは
ただいたずらに禍をきらって福だけを求めるが、道を求めるものはこの二つのものをともに越えなければ
ならない。そのいずれにもとらわれ執着してはならない」と。


注:リュウノヒゲは、別名ジャノヒゲとも呼ばれる多年生です。根茎から長く多数のひげ根を出す
植物ですので、根の良くはる事から土止めによく使われています。細長い糸状の葉は多数群がる
ように根から出ており、根本近くから外に向かっているので、噴水のような形にも見えます。
深緑色した葉の質は硬く、葉先は鈍く垂れ下がっています。この様な葉の様子から、龍のヒゲもしくは
蛇のヒゲが想像されてきました。