あらすじ〉

 室町時代、いまの千葉県に安房の国がありました。
領主である里見家の主は正義を守り、情に厚い立派な武将でしたが戦乱の時代、 周りの国々と何度も戦をしなければなりませんでした。 里見家には伏姫とい う娘がいましたが口がきけず、一度も 笑うことなく泣いてばかりいました。と ころが、三歳になったあるとき一人の老人から白い八つの玉のついた数珠をも らった途端に口がきけるようになり、そのことがあってから、伏姫は美しく利口な娘に成長していきました。そんな姫に里見家の飼い犬である八房という猛犬もよくなついていました。
 里見家が戦で負けそうになったときに、敵の大将を倒したら伏姫をもらうという約束を主と交わした八房は、見事に敵の大将を倒しました。里見家の主は 姫を八房に与えることに悩みましたが、伏姫は家のため、父のためと思い、老人からもらった数珠を首にかけ、八房にみちびかれて姿を消してしまいました。伏姫のことを心配するあまり病気になってしまった姫の母のためにも何とか姫を連れ戻そうと、姫と八房の行方を探し当てた里見家の主は家臣を引き連れて出発しましたが、八房を狙った鉄砲の弾が八房の身体を突き抜けて伏姫の命までも奪ってしまいました。心やさしい姫の魂は八つの数珠の玉にのり移り関 東の八つの国にそれぞれ散っていきました。その玉には「仁・義・礼・智・忠・ 信・孝・悌」の文字がひとつずつ刻まれていました。
  それからしばらくの間に、関東の八つの国からこの玉を持った八人の勇士が現れました。彼らは玉に刻まれた文字にふさわしい心をもっており、その心を一つにして里見家のために奮闘しました。彼らの活躍によって平和な時代がおとずれたのは、伏姫の死から三十余年あとのことでした。
彼ら八勇士はそれぞ れ里見家の姫と結婚し、幸せに暮らしました。

〈はしがきより抜粋〉

 皆さん、ここにやさしい現代の言葉に書き直された『里見八犬伝』は、
十九世紀の大小説家滝沢馬琴の原作で、全部で九輯百六巻、世界でも
数少ない絵入りの大長編小説です。
 (一部省略)
 八犬士はまるで道徳の魂のような人達ばかりですが、善人は必ず栄え
悪人は必ず滅びるという、馬琴の強い信念のあらわれと考えて下さい。
 馬琴は『八犬伝』を完成するのに二十八年かかりました。あと二年に
なって目が悪くなり、嫁のお路に字を教えながら書かせて、出来上がった
時には完全な盲目になっていました。七十五歳の年です。
  それから七年後に馬琴はなくなりました。    
                          京都大学教授  野間 光辰

伏姫と八房の像(滝田城址)
南総里見八犬伝


結城の合戦に敗れ安房に渡り、里見家再興を遂げた里見義実でしたが、安西影連に攻められたとき、飼い犬八房にふと「敵将の首を取ってくれば伏姫の婿にする」ともらします。伏姫は約束を守り、八房とともに富山に暮らします。仏に仕えて暮らす伏姫ですが、神がよいにより懐妊。身の潔白を示すために伏姫は自害します。この時飛び散ったのが八つの玉。この玉は、やがて八犬士のもとへ。こうして八犬士の物語は始まるのです。
八犬伝は架空の物語ですが、富山町には伏姫の籠穴や犬塚、八房誕生の地など、八犬伝にちなんだ地が数多くあります。実際に富山に登ってみたり、平群のあたりを訪ねるとあたかも八犬士がここで活躍したのでは、という気がします。

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